最後の嘘。

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何もかもわかっているかのような瞳から、視線が逸らせない。 固まる私を見て、瑞妃はふふっと笑う。 「何その顔。さすがに私だって気づくよ」 そう言って瑞妃はまた、鋭い視線で私を見た。 「………なんで、好きなのに断ったの?もしかして、私を気遣ったつもり?」 「っ、違っ…」 「じゃあ、なんで?」 納得のいく答えが聞けるまで許さない、とでもいいたげな瑞妃の圧力に、私は小さく息を吐く。 「………昨日言った通りだよ。私は……壱吾に酷い嘘を吐いて傷付けた。そんな私にやり直す資格なんてーー」 「それがなんなの?」 私の言葉を遮り、キッと睨みつける。 「それでも羽村さんは………香音が好きだって言ってるじゃない」 怒りと悲しみとが入り混じったような複雑な表情で私を見つめると、 「………全部失くしてから後悔したって、遅いんだから」 そう吐き捨てるように言葉にして、私の横を通り抜けて行った。
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