最後の嘘。

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ロッカーに鍵を突き刺したまま、瑞妃は真っ直ぐに私を見る。 「過去に何があったかなんて私にはわからないけど、一度くらい本音でぶつかってみなよ」 あの日から、本当の気持ちは口にしないと決めた。 一生消えない痛みと傷を背負うことが、壱吾を傷付けた私の償いだと思った。 「資格とか今更だとか、そんなの向き合うのが怖くて逃げるための言い訳でしょ?一番は、香音が"どうしたいか"なんじゃないの?」 …………私が、どうしたいか。 「羽村さんのこと、好きなの?嫌いなの?」 結局、答えなんてシンプルなもの。 私の気持ちだって、六年前から何一つ変わってない。 「…………っ、……好き」
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