最後の嘘。

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駅に向かう車内では、今まであったことをどこから話そうか…とか、とにかく今までのことを謝りたい…なんてことばかり考えながら、チラチラと腕時計で時間を確認する。 「………ギリギリかな」 手元の時計は、ちょうど11時を過ぎたところ。 間に合わないかもしれない不安が、私の中で大きくなっていく。 一分一秒が、こんなにも惜しい。 気付けば弱気になってしまいそうな自分をブンブンと振り払い、キュッと前を見据える。 ………間に合わなかったら、広島まで行こう。 最初から、そのくらいの覚悟で来てるんだから。 流れる景色を窓から眺めながら、ギュっと手に力を込めた。 ***** 駅に着き、電車を降りれば、ホームには人の波が溢れている。 その間をすり抜けながら、新幹線の改札口を目指す。 「っ、すみませんっ……」 思ったよりも人が多く、思ったように進めない。 時計の針は止まることなく、時を刻んでいく。 長い列が出来ているエスカレーター横の階段を急いで駆け降り、必死で走った。
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