最後の嘘。

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こんなに全力で走ったのは、いつぶりだろう。 息は上がり、チクチクと両足の踵に痛みを感じ始める。 それでも今はただ真っ直ぐに、改札口だけを目指して走った。 「……っ、ハァ、ハァ…」 辿り着いた新幹線の改札口に掲げられている電光掲示板を見上げると、ちょうど壱吾が乗る11時半の新幹線の案内がパッと消えたところだった。 「……はぁぁ……間に合わなかったぁ………」 一気に脱力感が襲い、その場にしゃがみ込むと、踵の痛みもより一層強く感じる。 私は大きく息を吐いて呼吸を整えると、再び立ち上がり、電光掲示板へ視線を向けた。 次の広島行きの新幹線は11時50分。 私は急いで切符を買うと、改札を抜けてホームへと向かった。 *** 空いているベンチに腰掛け、痛む踵をパンプスから浮き上げる。 「………痛いはずだ」 踵は皮が捲れ、ストッキングにまで血が滲んでいる。 どこで引っ掛けたのかわからないけど、右足のふくらはぎ部分のストッキングは伝線していた。
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