最後の嘘。

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私は鞄の中からポーチを取り出し、中から絆創膏を二枚手にする。 こんな場所でストッキングを脱ぐわけにもいかないし、とりあえずストッキングの上から踵に絆創膏を貼る。 そして、大きな溜息と共にベンチに背を預けると、ぼんやりと遠くを眺めた。 「………ちゃんと会えるのかな」 小さく零れ落ちた言葉は、ザワザワとしたホームの音にかき消される。 勢いで広島まで行くことを決めたけど、会える保証はないし、今更何を…と迷惑がられるかもしれない。 それでも、……もう後悔だけはしたくない。 「………会いたい………」 そう、口にしたその時。 「………香音?」 聞き覚えのある声が、私の名前を呼んだ。
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