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「……おまっ、……ハァ、なんちゅーこと……」
「違っ、ほら、そのっ……」
壱吾は首に手を置いたまま、そっぽを向いてがっくりと項垂れる。
上手い言い訳も思いつかず、あたふたする私を壱吾はチラ、と見てから、そっと手を掴むと、スーツケースと私の鞄を手にその場から歩き出した。
「……い、壱吾…?」
無言でさっきより人目の少ない場所へ移動すると、くるっとこちらを向く。
「……さっきの続きだけど。俺は触れても平気なんだよな?」
「………う、ん」
「じゃあ、もう一回」
そう言って軽く両手を広げ、「ん、」と急かすと、私は迷わず一歩を踏み出し、壱吾の腕に包まれる。
ぎゅっとされれば、自然と口から溢れる想い。
「…………好き」
「…………うん」
「…………大好き」
「…………うん」
そう口にしながら、胸がじんわりと熱くなってくる。
泣きたいわけじゃないのに、気付けば頬に一筋の涙が伝った。
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