最後の嘘。

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「あ、ちょっと!泣くのはナシだからね?そうなるのが嫌で黙ってたんだから」 先に釘を刺されて私はズズ…と鼻を啜ると、泣き笑いを浮かべる。 「……っ、ごめ……瑞妃、ありがとう……」 私の背中をポンポン、と紗羽が優しく撫でる。 「ほら、そろそろ行った方がいいんじゃない?羽村さん、改札出て香音がいなかったら寂しがると思うよ?」 腕時計で時間を確認すれば、壱吾が帰ってくるまであと一時間を切っていた。 私はロッカーから鞄を手にして鍵をかけると、みんなに向かって笑顔を見せる。 「じゃあ、行ってきます!」 「行ってらっしゃい♪」 「明日、詳しく話聞くからね?」 「あ、紅葉まんじゅう忘れないでよ!」 私は大きく頷いてから更衣室を飛び出し、壱吾が待つ駅へと急ぎ足で向かった。
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