最後の嘘。

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「やっばい!壱吾の方が先に着いちゃうかも…!」 急いで電車から降りると、あの時と同じように全力で新幹線の改札口へと走って向かう。 壱吾が乗っている新幹線が到着する10分前に改札口へとたどり着くはずだったのに、いつも利用している路線がまさかの列車事故の影響で、大幅な遅延が発生していた。 「あっ、すみませんっ!」 サラリーマン風の男性と互いに鞄がぶつかり、ペコリと頭を下げてからまた駆け足で向かう。 なんだかんだ私は、改札口へ走って向かう運命なのかもしれない。 「っ、ハァ……」 壱吾が乗っているはずの新幹線が到着したばかりなのか、改札口は沢山の人で溢れている。 この人混みの中、壱吾の姿を探すのは大変かも……。 そう思った瞬間。 「香音!」 名前を呼ばれて後ろを振り向けば、スーツケースの上に大きなお土産袋を抱えた壱吾が、携帯を片手に手をあげる。 「ただいま」 私は一目散に壱吾の元へと駆け出すと、思いっきり抱きついた。 「壱吾、おかえりなさいっ」 to be continued** Next Story:Side I
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