壱吾Side*プロローグ

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「っ、あ!…んっ、は……も…う…」 途切れ途切れに鳴く彼女の表情を見ることなく、自分勝手に事を突き進めていく。 「ア、……っあ、あ!」 一段とベッドが軋み、彼女の身体がビクンと跳ねると、息を整えながら彼女が俺に腕を伸ばし、首に巻きつけ甘ったるい声で俺を誘う。 「……ん、ね。もう一回、シよ?」 「………」 肩より少し長い髪。 ほんのり紅く染まる頬。 俺の名を呼ぶ甘い声。 似ていても、全然違う。 「……壱吾?」 「名前、呼ぶなっつってんじゃん」 彼女から離れると、余韻なんてものに浸るわけもなくベッドの端に座る。 そんな俺の背に彼女はわざとらしく胸を押し付け、唇を這わした。 「……彼女に対してその言い方、酷くない?」 俺は彼女に聞こえないように、そっと溜息を吐く。 面影を探すように付き合い始めたけれど、いくら姿が似ていたとしても結局は彼女じゃない。
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