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「あのさ。……悪いけど、やっぱお前とは付き合えねーわ」
「……え?なに、いきなり。意味わかんないんだけど……」
肩に置かれた手を振り払い、彼女の方を向けば、眉を潜め怪訝な表情をしている。
「好きになれなかった」
「………は?なにそれ」
身体まで重ねておいて何を言っているんだ、と思われても仕方ない。
結局俺は最初から彼女自身じゃなく、その後ろに別の彼女を重ねて見ていたんだから。
「ごめん。俺と別れてほしい」
「………それって、香音って人のせい?」
彼女が知るはずのない名前を口にされて目を見張ると、彼女はふっと口元を緩める。
「普段何があっても動じないくせに、この名前を耳にしただけでそんな顔するのね」
「………携帯、見たのか」
俺の携帯には未練たらしく彼女の名前が残っている。
繋がるはずのない番号なのに、今も消すことが出来ない。
「しょうがないじゃない。この間、寝言で大事そうに呼んだ名前が私じゃなく、その名前だったんだから」
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