再会

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腕を掴まれた彼女は、どうにかして先輩から離れようとしているのがわかる。 「先輩、無理強いはダメですよ」 絶妙なタイミングで声をかけると、先輩とその彼女がゆっくりと後ろを振り向き、俺を見上げる。 彼女と目が合ったその瞬間。 ………か、のん……? ドクン、と大きく高鳴る鼓動。 微かに目を見開いて、まじまじと彼女を見つめる。 彼女も明らかに俺を見て、動揺しているように思えた。 何度も口にした愛しいその名を声に出そうとする前に、 「お、羽村!やっときたか」 「すみません。遅くなりました」 主任の声で我にかえり、促されるまま彼女の斜め前に腰を下ろすと、おしぼりを受け取る。 至って冷静でいるけど、心の中はぐちゃぐちゃで。 どうして?なんで?ばかりが、頭の中を巡っている。 「……羽村壱吾です」 そう自己紹介をした俺は彼女の反応が知りたくて、もう一度チラリと視線を投げた。
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