再会

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先輩にニッコリと微笑んだ香音は、そのまま部屋を出て行く。 部屋のドアが閉まるのと同時に俺が立ち上がると、隣に座っていた彼女が不思議そうに俺を見上げた。 「羽村さん?どうかしました?」 「ちょっと、すみません」 彼女に一言断ってから、さっきまで香音が座っていた席へと向かう。 「先輩、口説き損ねた彼女は?」 「んー?…なに、からかいにきたわけ?」 シャンパンを傾けながらつまらなさそうにする先輩は、チラと俺を見上げる。 「違いますよ」 「じゃあ、なに……ああ、羽村も狙ってんの?」 ………面倒くせえ。 そんな話をしたいわけじゃねーんだよ。 返事を急かせるように「で、彼女は?」と、もう一度訊けば「化粧室」とだけ返ってくる。 それを聞いて、すぐさま俺は彼女が座っていた場所に置いたままのコートを手に取ると、 「これ、彼女のですよね?」 「ん?そうじゃない?」 それがどうかした?…と、いった目で俺を見上げる先輩に「ありがとうございます」とだけ言って軽く頭を下げると、香音のあとを追いかけるように急いで部屋を出た。
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