2052人が本棚に入れています
本棚に追加
俺を間に挟み、二人で乾杯を交わすと、先輩は徐ろに彼女へ質問を投げかけた。
「ねぇ、香音ちゃんってどんな男の人がタイプなのか知ってる?」
「………香音、ですか?」
先輩の質問に彼女は少し考える素振りをしながら、人差し指を顎に添え、ゆっくりと言葉を選びながら答える。
「ん~……香音って普段からあんまりそういう話、しないんですよね。興味がないっていうか……もうずいぶん彼氏もいないし」
「へぇ。理想が高いとか?」
「ん~……というより、恋愛に積極的じゃない気がします」
俺はその話に耳を傾けながら、内心穏やかじゃないくせに、澄ました顔でシャンパンに口をつける。
「今は仕事が優先ってやつ?」
「いい人がいれば恋愛したい、とは言ってましたけどね」
「俺は香音ちゃんの"いい人"には、なれないかな?」
「ハハハ、どうでしょう」
二人の笑い声に反して、無表情を決め込む俺。
…………なんにも笑えねぇし。
無言でチビチビとシャンパンを飲んでいると、彼女は突然「あ、」と声を上げる。
最初のコメントを投稿しよう!