再会

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「そういえば前に香音が『あの時以上の気持ちになれる人がいない』…って言ってました」 「あの時……?」 先輩だけじゃなく、俺も彼女の方へ視線を向けると、彼女は記憶の糸を辿るように、少し宙を見上げる。 「詳しく話してくれたわけじゃないんですけど……昔すっごく好きだった彼がいたみたいで。あの時以上に好きになれる人とじゃないと恋愛できないかも…って笑ってました」 香音の『すごく好きだった彼』が、俺ではないのは確か。 だって俺は、香音に『大嫌い』と言われて振られたんだから。 「あ、そうそう!その話をしてた時に香音がピアスを落としたって大騒ぎして、みんなで大探ししたんですよ」 彼女はその時のことを思い出したのか小さく笑みを零すと、このあと俺をひどく動揺させる。 「誕生石がついたピアスらしいんですけど、すごく大事にしてたみたいで。あんなに慌てた香音を見たのも珍しかったなぁ。…結局見つからなくて、相当落ち込んでましたけどね」
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