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「え、っと……確かこれくらいの大きさの石がついた、シンプルなものだったと思いますけど……」
彼女は、親指と人差し指でピアスの大きさを示してくれる。
「どんな色の石だったか、覚えてないですか?」
笑顔ひとつ浮かべない俺に見下されて、彼女は「……えっと、」と口籠る。
俺は自分が思っている以上に、冷静になりきれていなかったんだと思う。
「なに、羽村。それがそんなに気になるの?」
明らかに、何かを勘繰るような先輩の声と視線。
……………落ち着け、俺。
呼吸をひとつ落とすと、眉を下げ、口元を緩める。
「……いや、知り合いが持っているものと似てる気がして」
苦しい言い訳だけど、どうしても確かめたくて仕方がない。
だって、どう考えたっておかしいだろ。
大嫌いだと告げた相手との思い出のピアスを、大事にする理由が見つからない。
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