2052人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ごめんなさい。はっきりと覚えてるわけじゃないんですけど………たぶん緑っぽい色だった気がします」
『壱吾は8月だから……ペリドットっていって、コレ』
少し照れながらソレを指差していた香音を思い出す。
……………なんで。
俺の中で、何かがガラガラと崩れ落ちていく気がする。
矛盾した行動は簡単に俺を揺さぶり、小さな小さな期待さえさせてしまう。
「……羽村さん?」
俺を見上げる彼女に「あ、……ありがとうございます」と御礼を告げると、今度は彼女が俺に質問をぶつけた。
「あのっ、羽村さんは…その……………香音のことが気になるんですか?…っ、さっきも香音のコートを持って出ていくのを見たので……」
ただ真っ直ぐに、何ひとつ間違っていない疑問をぶつけられて、俺は一瞬止まる。
隣では先輩の射るような視線が、俺をチクチクと刺した。
最初のコメントを投稿しよう!