再会

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目が合った瞬間から、香音しか見えなくなった。 今も昔も、香音だけが俺の胸を揺らす。 「そこまで周りに気が配れるって素敵ですね」 一瞬、表情を失くした彼女がすぐにニッコリと微笑む。 ……………これは、そういう意味じゃないんだけどな。 苦笑いを零すしか出来ない俺に、彼女は続ける。 「あの…よかったら連絡先、教えてもらってもいいですか?」 膝の上で携帯をぎゅっと握りしめ、少し恥ずかしそうに上目遣いで見上げる彼女に、俺はスーツの内ポケットから名刺入れを取り出すと、一枚引き抜いて差し出した。 「どうぞ」 「え……」 名刺を受け取った彼女は、明らかに戸惑った表情を向ける。 そこには個人的な連絡先なんてものは一つもなく、会社のPCアドレスしか載っていない。
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