再会

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「……えっと、」 「すみません。こっちの方が連絡取りやすいので」 いつも連絡先を訊かれた時は、こうして名刺を渡すことにしている。 個人的に連絡先を交換することを避けているのもあるけど、後で返事をしようと思ったまま、忘れてしまうことも多い。 だからPCの方が確実といえば確実だ。 「……あ、そうなんですね。わかりました!」 彼女の戸惑った表情が、安堵した笑みへと変わる。 そして俺の名刺を携帯カバーへと滑り込ませていると、 「ねぇ、俺の名刺はいらない?」 明らかにこの状況を楽しんでいる先輩は、口元を緩めながら身を乗り出す。 彼女は苦笑いを浮かべながら「貰って、香音に渡せばいいですか?」なんて言ってみせると、 「いや、香音ちゃんには自分で渡しに行くよ」 そう言ってチラリと俺に向けた視線には、挑戦的な色が見えた。
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