再会

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「何にする?」 「……天麩羅蕎麦で」 お昼時なのもあって、なかなかの賑わいをみせる店内。 忙しなく動く店員さんに注文を告げた後、互いに言葉を交わすことなく、温かいお茶が入った湯呑みに口をつける。 ふわっと身体が解れていく感覚は、どこか心を落ち着けてくれる気がした。 「………この間、香音ちゃんと食事したよ」 そっとテーブルに湯呑みを置いた先輩は、にこやかに俺を見る。 「………そうですか」 「あれ?思ったより反応薄いね」 先輩は顎に手をやり、少しつまらなさそうな顔をする。 …………んなわけねぇだろ。敢えて出さねーようにしてんだよ。 先輩が、香音絡みで俺に会いに来たことくらいわかってたつもり。 それでも先輩の口から香音の名前が出ただけで、こんなにも胸がザワザワする。 「それで?言いたいことは、それじゃないでしょう?」
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