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交わった視線が周りの空気をピリっとさせると「お待たせ致しましたー」と、場にそぐわない明るい声が広がった。
俺の目の前に天麩羅蕎麦、先輩の前に鴨南蛮蕎麦の器がドンと置かれると、立ちのぼる湯気と出汁の香りが仄かに鼻を掠める。
「ん」
俺の前にスッと差し出される割り箸。
「……ありがとうございます」
そう言って差し出された割り箸を受け取ったはいいが、先輩が手を離す気配がない。
むしろ、グッと力を込めた気がした。
「……なんですーー」
「本気なら、文句ない?」
一瞬、なにを言われたのかイマイチよく飲み込めなかった。
本気?誰が?
「……は?」
「だから、本気ならいいんだろ?」
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