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先輩はふっと笑ったあと割り箸から手を離すと、俺の答えを聞くこともなく、今度は自分の分の割り箸を抜き取り、パキッと小さな音を立てて目の前の器へと伸ばす。
微動だにしない俺の耳には、美味しそうに先輩が蕎麦を啜る音が響いた。
「ほら、早く食わないと伸びるぞ?」
まるで何事もなかったかのように先輩は俺の目の前にある器を顎でクイっと指すけど、正直俺はそれどころじゃない。
「………冗談、ですよね?」
「なにが?」
「本気だって言ったことです」
先輩は蕎麦を啜る手を止め、俺を見る。
「冗談だと思う?」
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