再会

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突きつけられた言葉と真っ直ぐに俺を見る視線に、冗談の色は見えなかった。 それどころか先輩のこんなに真剣な眼差しを見たのは、ほぼ初めてに近いかもしれない。 それが全てを物語っている気がして、俺は黙ることしか出来なかった。 しばらく続く沈黙と互いに蕎麦を啜る音だけが響く。 余計なことを考えないようにただ無心で箸を動かすけれど、どうしても堪えきれない思いが言葉となって零れた。 「………なんで、香音なんですか?」 この世の中には沢山の女性が溢れているはずなのに、どうして先輩が本気になった相手が、よりによって香音なんだろう。 「……俺に全く興味がないから、かな」 先輩のその一言が、俺の心に静かに落ちていく。 先輩の周りに群がっている女性を知っている分、ほんの一瞬だけ納得してしまった自分がいて、もうそれ以上、何も言葉にできなかった。
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