再会

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蕎麦屋を出た俺は、先輩の前に千円札を差し出す。 「昼飯代、返します」 「いいよ。誘ったの俺だから」 それを受け取らずに、会社方面へと歩き始めた先輩の前を阻むようにして俺が立ちはだかる。     「借り、作りたくないので」 押し付けるように突き出せば、先輩はひとつ息を吐いてから仕方なく受け取る。 「借り、ね。……俺達、ライバルだし?」 先輩のニヤリとした笑みを前に、キュっと口を結ぶ。 ………ライバルだなんて思ってもないくせに。 先輩の方がハイスペックな上に余裕があって、常に落ち着いていて大人だ。 俺は香音の"元彼"というだけで、先輩の本気宣言を前に情けないくらいに突っかかるだけ。 余裕の欠片もなければ、過去を引きずり続ける女々しい男。 しかも香音から大嫌いだと言われているだけに、どこからどう見たって先輩の方が有利だろう。
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