再会

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先輩は仕事の関係で遅れるらしく、俺達だけで先に始めることにした。 それぞれアルコールを手にして、乾杯のあと一気に流し込む。 旨いはずのビールが味気なく感じてしまうのは、きっと一番会いたかった人がいないから。 「羽村さん、欲しいものあれば言って下さいね。私、取りますから」 俺の前に取り分けたサラダの器を置きながら、彼女は言う。 細かな気配りが出来る彼女を、きっと他の男性なら放っておかないはず。 なのに俺は、今すぐにでも帰りたい衝動に駆られてしまっている。 「………ありがとうございます」 御礼だけ述べて、またビールのグラスを手に取る。 すると、スーツのズボンのポケットで携帯が震えていることに気付いた俺は、持ち上げたグラスを一旦テーブルに戻し、チラっと着信相手を確認してから、またポケットに押し込んだ。
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