再会

31/40
前へ
/747ページ
次へ
振動が一度止んだかと思えば、間髪入れずに再び携帯が震える。 たぶん間違いないだろうけど、念の為もう一度着信相手を確認すると、さっきと同じ人物の名前が表示されていた。 ………相変わらず、しつけーな。 「ん?羽村くん、どうかした?」 隣に座る石田さんが、携帯に触れる俺に気付いて声をかける。 「いや、なんでもないで……」 着信相手に完全無視を決め込もうとした俺は、ビールのグラスに手を伸ばしかけたところで、あることを思いつく。 「…っ、すみません!ちょっと電話出てきます」 勢いよくガタっと立ち上がると、急いで部屋を出て通話ボタンをタップする。 『もしもし、羽ーー』 「和泉、ナイスタイミング」 着信相手の和泉は、開口一番褒められたことにわかりやすく戸惑いをみせるも、そのまま話はじめる。 『何かよくわかんねーけど……まぁいいや。あのさ、今年の……』 「でも悪い。今から大事な用事が出来るから、切るわ」 『は?おい、ちょ意味わかーー』 心の中で和泉に謝罪と感謝をしながら通話を終了すると、俺はまた急いで部屋に戻った。
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加