再会

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***** 仕事と嘘を吐き、香音が働くデパートへとやってきた俺は、従業員用の出入口だと思われる場所の近くで香音が出てくるのを待つ。 …………これ、完全にストーカーだよな。 頭の中ではわかっていても、香音に会いたくて会いたくて仕方ない気持ちが俺を突き動かす。 十五分程したところで、キィ…という音と共にヒールの音が響く。 そちらに顔を向ければ、手を擦り合わせながら香音がこちらに向かって歩いてきた。 俺がいることには、まだ気付いていない。 「お疲れ」 一歩前へ踏み出し、そう声をかけると、思いっ切り驚いた顔をした香音が俺を見る。 「………なに、してるんですか?」 「北見さん、待ってた」 その場に立ち尽くす香音に、また一歩近づく。 「………行かなかったんですか?」 「行ったよ。でも北見さん来ないって聞いたから、仕事だって嘘ついて抜けてきた」
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