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大通りから細い路地に入れば、行きつけのラーメン屋が見えてくる。
もっとお洒落なレストランに連れて行くべきなんだろうけど、パッと思いついたのがここだった。
先輩なら……なんて考えそうになるのを必死で振り払い、店の引き戸を開ける。
店に入ってカウンターに並べば、この距離感に初めて一緒に観に行った映画館の座席を思い出す。
あの時も今も冷静を装っているけど、本当はすごく緊張していた。
メニューを決め、注文を通す時に、こっそり香音の方だけ麺を硬めにしておいたのは、昔からの香音のこだわりを覚えていたから。
ラーメンがくるまでの間、何を話そうか頭の中で考えるけど、結局口から飛び出したのは一番気になっていたこと。
「………この間、先輩とご飯行ったんだって?」
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