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"もしかしたら、先輩が嘘をついてるのかもしれない"
そんな淡い期待は見事に打ち砕かれた。
香音の口から否定的な言葉は聞けず、むしろどうして俺がそれを知っているんだと言わんばかりの顔を向けられる。
「好きなの?先輩のこと」
………こんなこと訊いてどうするんだよ。
「好きだ」と言われたら、ヘコむことくらい自分でもわかってるくせに。
それでも思いとは裏腹に、香音の反応を伺うようじっと見つめれば、答えを聞く前にラーメンを持ってやって来た店員の声に遮られる。
ほっとしたような、余計にモヤモヤが増したような気持ちは、ラーメンと共に飲み込む。
それでも全部は飲み込みきれなくて「先輩はやめとけよ」なんて、卑怯な言葉をぶつけてしまう。
「……羽村さんには関係ないです」
そう冷たく突き放されたかと思えば、そっと器に煮卵が浮かぶ。
予想外の行動と「好きじゃない」という言葉に驚いて隣に座る香音を見つめると、バツが悪そうにフッと目を逸らし、再び箸を動かし始める。
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