再会

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辿り着いた香音のアパートは、駅からすぐ近くのところにあり、道を挟んだ向かいにはコンビニがあった。 人通りもまあまあ多い方だし、街灯が辺りを明るく照らしているお陰で、夜遅くに一人で帰宅するのも怖くはないだろうけど……。 それでも何もないとは言い切れないし、心配は心配だ。 「もうここで大丈夫だから」 そう言って振り向いた香音の手を、そっと掴む。 まだ一緒に居たくて「部屋まで送りたい」と足掻いてみたけど、ただ香音を困らせただけだった。 「……そういうこと、簡単に言わない方がいいよ」 俺から視線を外した香音が、ポツリと呟く。 ………簡単に言ってるわけねーだろ。 自分でもビックリするくらい、手汗がすごいんだから。 「香音にしか言ってない」 「……やめてよ」 今にも消えそうなくらい小さな声が、二人の間に流れる。 「香音」 「……やめて」
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