決断

6/20
前へ
/747ページ
次へ
なにか共通点を探すように、彼女はいろんな話題を俺に投げかけてくれる。 いつもみたいな恋愛に関する話は一切なく、仕事や家族、彼女の趣味の話など、食事をしながら話す彼女は、それだけで楽しそうだった。 *** 「羽村さん、今日はご馳走様でした。すっごく美味しかったです!」 二時間程でお店をあとにして、駅に向かって歩いている間も終始ご機嫌の彼女は、食事の感想をめいっぱい伝えてくれる。 当然、悪い気なんてしないし、本当にいい子だと思うのに、俺の心だけはビクとも動いてくれない。 「じゃあ、ここで」 彼女が使う路線のホームへと続く階段横。 行き交う人々の邪魔にならないように端の方へと、身体を寄せる。 「じゃあ、気をつけて。おやすみなさい」 そう彼女に言葉を投げると、そのまま背を向けようとした俺を呼び止める。 「っ、羽村さん!あの、…………また誘ってもいいですか?」
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加