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香音に振られて相当落ち込んでいた俺を、香音の影を他の女に追い求めた俺を知っている兄貴は、なかなか複雑な表情をしている。
「壱がさ、香音ちゃんをすっげー好きだったのはわかってるけど、もう六年だぞ？いい加減、忘れて前にーー」
「香音と再会したんだよ」
兄貴の言葉を遮るようにそう言えば、目を丸くして驚き、やがて眉間に皺が寄る。
「は？……それ妄想？お前大丈夫？」
「妄想じゃねーし」
偶然、飲み会で会ったこと。
香音から「終わったこと」だと告げられたこと。
それでも諦めたくないこと。
ひと通り兄貴に話し終えると、またもや大きな溜息と共にがっくりとうなだれる。
「お前……わざわざ苦しい方、選ばなくてもいいのに」
「俺には諦める方が、何倍も苦しいんだよ」
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