決断

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そこには、先輩の姿。 あの時の言葉が、頭の中で蘇る。 "本気だから。……負けねぇよ" 先輩の本気を目の当たりにして、心拍数が上がっていくのが自分でもわかった。 話が終わったのか、タクシーのドアが閉まり、ゆっくりと走り出したのを見届けた香音が、アパートの方へと足を向けたと同時に、俺も足を前に踏み出す。 「………先輩は、やめとけっつっただろ」 自分でもびっくりするくらい、冷たい低い声が零れる。 香音は俺の姿を目に留めると、驚いた表情でその場から動かない。 「ずいぶん、仲良くなってない?」 近くまで歩み寄り、俺を見つめる香音を見下ろす。 会えて嬉しいはずなのに、心の中は嫉妬と焦りが渦巻いていた。 「………なに、してるの?」
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