決断

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会いに来た理由があるのに、口から出るのは嫌味ったらしい理由ばかり。 香音が誰となにをしようが、俺に口出す権利はないのに。 「香音、携帯出して」 「………なんで?」 分かりやすく眉を寄せる香音に、思わず渇いた笑いが零れる。 「番号、教えてほしいから」 そうハッキリ告げれば、揺れる瞳。 鞄を握り締める手にギュっと力が込められているのがわかる。 なかなか携帯を取り出さない香音にしびれを切らし、目の前にスッと自分の携帯を差し出すと、 「嫌なら、部屋の番号でもいいけど?」 そう言えば、余計に香音の表情が曇る。 卑怯なことをしている自覚はある。 困らせたいわけでも、こんな強引に聞き出したかったわけでもないのに、さっきの場面が俺から余裕を奪っていく。
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