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「羽村さんも苺どうですか?」
近くにいた相田さんに苺を勧められ、俺は困ったように笑う。
「せっかくだけど、ごめん。俺、苺食えないの」
そう言えば、大体みんな同じ反応を示す。
すべてを知っている香音だけは、じっと黙ったまま。
嫌いな理由が名前のせいだと言えば、主任はハッとしたように声を上げた。
「羽村、もしかして名前呼ばれるの嫌がる理由ってそれ?」
「そうです。小学生の頃、よくからかわれたせいで自分の名前が大嫌いなんですよね」
正直、今も自分の名前は好きになれない。
好きになる瞬間があるとすれば、それは香音に呼ばれる時だけ。
「……でも俺もある人のお陰で、今はちょっとだけ自分の名前を好きになれました」
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