告白

10/30
前へ
/747ページ
次へ
「羽村さんも苺どうですか?」 近くにいた相田さんに苺を勧められ、俺は困ったように笑う。 「せっかくだけど、ごめん。俺、苺食えないの」 そう言えば、大体みんな同じ反応を示す。 すべてを知っている香音だけは、じっと黙ったまま。 嫌いな理由が名前のせいだと言えば、主任はハッとしたように声を上げた。 「羽村、もしかして名前呼ばれるの嫌がる理由ってそれ?」 「そうです。小学生の頃、よくからかわれたせいで自分の名前が大嫌いなんですよね」 正直、今も自分の名前は好きになれない。 好きになる瞬間があるとすれば、それは香音に呼ばれる時だけ。 「……でも俺もある人のお陰で、今はちょっとだけ自分の名前を好きになれました」
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加