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短いキスを交わし、そっと唇を離せば、香音の頬には涙が伝っていた。
躊躇いがちにそれを優しく拭い、スリ…と頬を撫でる。
戸惑いながらも拒まない香音に欲が出た俺はまた唇を重ねると、ぐっと胸を押し返す手と離れる唇。
「………これ以上は、やめて」
俯いたまま、必死で俺との距離を取る香音を見てたら、掛ける言葉なんかなくて。
「帰る……」という香音と共に、駐車場へ向かった。
***
帰りの車内は終始無言で。
香音はこっちを向くことなく、ただひたすら窓の外を眺めていた。
アパートの近くに車を停めれば、すぐに外されるシートベルト。
「………送ってくれてありがとう。じゃあ……」
「………香音、俺は謝らないから」
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