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車を降りようとしていた香音は背を向けたまま、じっと動かない。
「キスしたこと、謝らない」
ようやくこちらを見た香音と目が合うも、すぐに逸らされ「……おやすみなさい」という言葉だけ残すと、車のドアが閉められた。
アパートへ向かって歩いて行く香音の姿を見つめ、大きな溜息を零したあと、ハンドルに項垂れるようにして倒れ込む。
「……謝らないってなんだよ……。そこは謝れよ、俺……」
キスしたことを後悔してるわけじゃないけど、もっと香音の気持ちを考えなきゃいけなかったはずなのに。
「……あー……最低。自業自得」
自らを責めたあと、ずっとここにいるわけにもいかず、俺はゆっくりと車を走らせた。
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