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「……もしもし」
『あ、羽村さんですか?…葛宮です。お仕事中、すみません』
電話越しの彼女は落ち着いていて、ますます俺に何の用事があるのかわからない。
「いえ、……あの、なにか…」
『実は今日、香音と一緒に呑んでたんですけど、酔い潰れちゃって……今、お店で寝ちゃってるんですよね』
「………え?」
『私ひとりじゃ連れて帰れないので、申し訳ないんですけど、羽村さん迎えに来てもらってもいいですか?』
葛宮さんの言葉に、俺は口を噤む。
あの日以来、香音と連絡はもちろん、会ってもいない。
毎日仕事が忙しい……なんていうのは自分への言い訳で、ただ決定的な"なにか"を告げられるのが怖くて、逃げてるだけ。
「……なんで、それを俺に…?」
そう訊けば、少し含んだ言い方で返す彼女がいた。
『桐生さんにお願いした方が、よかったですか?』
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