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タクシーを待つ間、葛宮さんは小さなメモ用紙に何かを書き込むと、ビリっと破き、俺の上着のポケットに押し込む。
「香音のアパートの住所と部屋番号、渡しておきますね」
何故か楽しそうにしている彼女は、俺を見て微かに微笑んだ。
「羽村さん、さっきの話の続きですけど……"大嫌い"って、それ本当に香音の本心だと思いますか?」
真っ直ぐに向けられた目と言葉に、しばし沈黙が流れ、大通りを走る車のヘッドライトが、お互いの横顔を照らしていく。
「……そうじゃなければいいのにって、何百回も思いましたよ」
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