欲望

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そこまで話し終えると、ちょうどタイミングよくタクシーが目の前に停まり、ゆっくりと開くドアに向かって足を前に進める。 先に香音を乗せたあと、葛宮さんに乗るように促すも、首を横に振られた。 「羽村さん」 タクシーのドアが閉まる前に、葛宮さんに呼び止められる。 「私、香音には幸せになってもらいたいんです」 その言葉の意味するものは、なんなのか。 「……はい」 「だから、頑張って下さい」 「……え、」 「香音のことは諦めてほしい」とか「これ以上、困らせないでほしい」なんて言われるかもしれないと予想はしていても、まさか応援されるとは思っていなかった俺は、戸惑いを隠せない。 「影の協力者として、応援してますから。じゃあ、おやすみなさい」 ニッコリ微笑む彼女を残して、パタンと閉まるドア。 そしてタクシーはその場から、ゆっくりと走り出した。
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