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香音らしくない言い方にすぐ期待したくなる自分がいるけど、心の中で首を振り、はっきりとした言葉を向ける。
「困ることなんか一つもねーよ。気持ちには応えられねーってことをハッキリさせに行ったようなもんだし」
「………気付いてたの?」
驚いたように少し目を丸くする香音に、俺はふっと鼻で笑った。
「誰かさんと違って、鈍くねーから」
ベッドで好きな女と見つめ合う。
これ以上ないほどの仕打ちに耐えながら、香音との距離を縮める。
………ずっと気になってたけど、もしかして泣いた?
ゆっくりと香音に向かって手を伸ばせば、明らかにビクっと肩を揺らし、俯いた。
「涙の跡、ついてる」
伸ばした手は香音に触れることなく、そっと元の場所へと戻る。
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