欲望

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「急いで仕事終わらせて、何回起こしても起きない香音をタクシーに乗せて、部屋まで運んだんだけどなー」 俺は……ずるい。 こんなことを言えば、香音が何も言えないことくらいわかるのに。 「毎日残業続きで今にも寝れそうなくらい疲れてんのになー。それなのに香音は、今から帰れとかそんなひっでーコト言うんだ?」 まだ一緒にいたいってだけで、こんな嫌味ばかりを並べるんだから。 少しの沈黙のあと、「……今日だけだから」と微かな溜息と共にそう口にした香音は、クローゼットから毛布を取り出し、リビングへと足を進めた。 「私、ソファで寝るから、壱吾ベッド使っていいよ」 「は?何言ってんの。俺がソファでいいから」 香音をソファで寝かせて、俺がベッドだなんてまずありえない。 香音の手から毛布を奪うと、そのままソファへゴロンと寝転んだ。
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