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………どうしてこうなったのか。
香音のベッドに、ひとり毛布に包まり横たわる俺は、微かに聴こえる水音に小さく息を吐き出した。
この状態で呑気に眠れるほどの神経は、俺にはまだない。
全身が研ぎ澄まされたように、微かな音にさえ敏感に反応してしまう。
当たり前だけど、なかなかこない香音が気になり、そっとベッドを抜け出すと、静かにリビングの方へ足を向けた。
キッチンに立ち、俺からは背中しか見えない香音が、ふわぁ…と欠伸を零す。
「……なにやってんの?」
そう声を掛ければ、びっくりしたような顔を向ける。
「起きてたの?」
「一瞬寝てたけど、物音で起きた」
………なんて、嘘だけど。
自分からあんなこと言っておきながら、緊張して寝付けなかったなんて口が裂けても言えるはずがない。
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