欲望

25/30

2049人が本棚に入れています
本棚に追加
/747ページ
思い出を口にすればするほど、あの別れは嘘だったんじゃないかって思えてしまう。 「……あれ、すっげー可愛いかった」 こんな話を聞かされた香音が何を思い、何を考えているかはわからない。 お互いに口を閉ざし、背を向けたまま時間だけが過ぎる。 「………香音、」 長い長い沈黙を破り、そっと名前を呼ぶ。 「……なに?」 「……俺は、今も昔も香音しか好きじゃねーよ」 幾度となく伝える"好き"に、しつこいって呆れてるかもしれない。 いい加減、うんざりしてるかもしれない。 それでも俺は気持ちを伝える以外、できることがない。 「………香音は、……今も俺のこと…………」 ーーそこで俺の意識は途切れ、気づいた時には朝を迎えていた。
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2049人が本棚に入れています
本棚に追加