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思い出を口にすればするほど、あの別れは嘘だったんじゃないかって思えてしまう。
「……あれ、すっげー可愛いかった」
こんな話を聞かされた香音が何を思い、何を考えているかはわからない。
お互いに口を閉ざし、背を向けたまま時間だけが過ぎる。
「………香音、」
長い長い沈黙を破り、そっと名前を呼ぶ。
「……なに?」
「……俺は、今も昔も香音しか好きじゃねーよ」
幾度となく伝える"好き"に、しつこいって呆れてるかもしれない。
いい加減、うんざりしてるかもしれない。
それでも俺は気持ちを伝える以外、できることがない。
「………香音は、……今も俺のこと…………」
ーーそこで俺の意識は途切れ、気づいた時には朝を迎えていた。
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