欲望

26/30

2049人が本棚に入れています
本棚に追加
/747ページ
***** 「…………」 互いに背を向けて寝ていたはずが、目を覚ませばすぐそばに無防備に眠る香音の寝顔。 一瞬で眠気なんか吹き飛び、かわりに胸がせわしなく動き始める。 「……うわ、寝落ちとか……サイアク……」 香音を起こさないようにそっとベッドを抜け、洗面所へと足を向けると、いろんな邪念を振り払うように朝の準備を始めた。 リビングに戻り、香音が作って置いてくれたベーグルサンドを口に運ぶ。 「……………うま」 懐かしさに胸がギュッと締めつけられ、ひとくち噛じる度に過ごした日々が蘇る。 「…………また食えるなんて思わなかったな」 思いを噛み締めながら全て食べ終えると、食器を洗い、身支度を整える。 ベッドルームに目をやれば、さっきと変わらず気持ち良さそうに眠る香音がいた。
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2049人が本棚に入れています
本棚に追加