欲望

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これはなんて答えるのが、香音にとって最良なんだろう。 そもそも、この男と香音は本当に知り合いなのか……? 不信感を拭えない俺は、 「……急ぐんで。ご想像に任せます」 肯定も否定もせずに、さっさとその場から立ち去った。 そんなことがあったせいか、なんだか胸はザワザワして、気が気じゃなくて。 少しでも早く香音の元へ行きたくて、急いで仕事を終わらせた。 会社を出て、すぐに香音に電話をかける。 数回のコール音のあと、少し戸惑ったような声が耳に届いた。 『………も、しもし?』 『あ、香音?…今、仕事終わって、これから向かうから』 『…わかった。気をつけてね』 『……ん。じゃあ、またあとで』 外は小雨が降り出したのか、ちらほら傘をさす人の姿が目立ちはじめる。 俺は気にせず飛び出すと、傘もささずに駅へと走った。
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