動揺

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「おかえり………なさい」 インターホンを鳴らし、わりとすぐにドアが開くと、香音が顔を覗かせ、そう言って迎えてくれる。 「……ただいま。これ、先に返しとく」 こんなやり取りが久しぶりすぎてワンテンポ遅れてそう返すと、香音の前にキーケースを差し出し、手のひらに乗せた。 「………ポストにでも入れておいてくれればよかったのに」 「わざとだよ。香音に会う口実が欲しいから」 腕についた水滴を払いながらサラリと言葉にしたけど、香音の顔は見れなかった。 きっと、困ったように視線を落としている気がしたから。 気を利かせた香音がバスルームへとタオルを取りにいくと、俺に向かって差し出す。 それを受け取り、スーツをささっと拭く俺の姿を眺める香音の視線は、なぜか胸元へと注がれていた。
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