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流れる沈黙が、とても長く感じる。
コーヒーマシンの前から微動だにしない香音の隣に並び、その手からマグカップを抜き取った。
「なんて答えたか、気になんねーの?」
「…………」
口を噤んだまま、こちらを見ようとはしない香音に、ひとつ溜息を零す。
「お前、やっぱなんか隠してんだろ?」
グイ、とこちらを向かせるも、視線は交わらないまま。
「………別に……なにも」
「隠し事する時、絶対目合わせようとしないとこ、変わってない」
頼むから、何かあるなら言ってほしい。
そんな思いをぶつけてみても、結局かわされただけ。
「……大丈夫。心配しない、で」
頼りなく笑うと、俺のそばを通り過ぎる。
………何が心配しないで、だよ。そんな表情、してるくせに。
少し距離が近づいたと思っても、それは勘違いだと思い知らされる。
俺と香音との間にある見えない壁は、そう簡単に壊れてはくれない。
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