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「……え、なんで……」
振り向き、俺を見上げた香音は、ただただ目を丸くして驚いている。
腕を掴まれたこともだけど、なぜ俺がここにいるのか不思議で堪らないといった表情。
「っ、ハァ……っんでじゃねーよ!」
微かに香音の肩がビクリと揺れる。
「ハァ、っ、…一人で行くとか危険だってわかんねーの!?あれだけ頼れっつっただろ!」
周りの視線なんかお構いなしに、つい声を荒げてしまう。
付き合っていた時も喧嘩はしたけど、こんなに本気で怒ったのは初めてかもしれない。
俺を見上げる視線は、ゆっくり足元へと落ちる。
キツい言い方をしたことは自分でもわかっているけど、それだけ香音のことを心配しているんだと伝わってほしい。
「………間に合ってよかった……」
俺は長い長い安堵のため息を漏らすと、軽くネクタイを緩めた。
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