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ひと息ついた後、香音の前に手を差し出せば不思議そうな目で見つめられる。
「手。彼氏のフリするなら、繋いだ方がいいだろ」
返事は待たずに香音の手をしっかりと握り、横断歩道へ向かって歩き出す。
「……ちょ、ちょっと待って!……一緒に、来てくれるの……?」
「そのために走ってきたんだっつーの!」
「そもそも!……なんで壱吾が知ってるの?」
「詳しいことは後で話す。言っとくけど!俺は怒ってんだからな。香音が嫌がろうが、今、俺は香音の彼氏だから」
反論は受け付けないとばかりに、スッパリと言い切る。
今だけは何を言われても、絶対に譲らないつもりでいた。
だけど、香音の反応は意外と素直なもので、一方的に握った手を握り返された瞬間。
……………泣きそうになった。
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