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男は実家の工場を継ぐために、地元へ帰るらしい。
もう香音に会えないのなら、せめて想いだけでも伝えたい……ということ。
「怖い思いをさせて本当にすみませんでした。……最後にちゃんと話せてよかったです。聞いてくれてありがとうございました」
男は深く深く頭を下げたあと、俺達の前から去って行った。
***
「………いつまでこうしてんの?」
男が去ってから、もうずいぶん経つ。
一気にコトが進んで気持ちが追いつかないんだろうけど、この状況がなんとなーく面白くない。
…………つか、いつまであの男のことを考えてんだよ。
「いい加減、帰るぞ」
みっともない嫉妬を隠しながら立ち上がると、香音の手を引いて店を出る。
タクシー乗り場へ向かう俺の心の中は、いろんな感情がごちゃまぜになっていた。
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